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ナノテクノロジーの実用化に向けて |
−その社会的課題への取り組み− |
阿多誠文編著 |
A5・380頁 / 3080円 発行年月日 : 2008年1月 ISBN : 978-4-7655-4123-7 |
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21世紀の最も重要な科学技術と認識されるナノテクノロジーは,バイオからITまでさまざまな技術の共通基盤技術であり,その社会的影響の課題は広範で多岐にわたる。ナノ粒子のリスクや標準化,教育課題,地域コンソーシアムによるインキュベーション,リテラシーやコミュニケーションの課題など,各分野で真摯に取組んできた第一人者が執筆。それぞれの課題がナノテクノロジーのコア技術の研究開発とバランスよく連携することで,その技術のリスクが適切に管理され,便益が最大限にもたらされるような社会価値創造の方法論を提案する。
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1章 2000〜2007年のナノテクノロジーの研究開発 1.1 コア技術の研究開発に社会的影響の課題をどう位置付けるか 1.2 責任ある研究開発は否定的方法論ではない 1.3 ナノとナノテクノロジーの意味するところ 1.4 ふたつのキーワード,ナノテクノロジーとリスク 1.5 ナノテクノロジーの実用化と科学的不確かさ 1.6 ナノテクノロジーへの開発投資は有効に使われているのか 1.7 ナノテクノロジーをどう伝えるか 1.8 ナノテクノロジーの理解のために 1.9 科学技術の必然,ナノテクノロジー
2章 化学物質としてナノ材料を考える−化学物質管理を理解することから− 2.1 はじめに 2.2 化学物質とは何か 2.3 日本の化学物質に関する規制の現状 2.3.1 化学物質の管理政策の流れと関連法令 2.3.2 化審法 2.3.3 化管法 2.3.4 規制と自主管理のベストミックスとは 2.3.5 労働安全衛生マネジメントシステム 2.4 海外の化学物質規制の現状 2.4.1 アメリカの化学物質規制およびナノテクノロジーへの規制の考え方 2.4.2 欧州の化学物質規制 2.4.3 カナダのナノ材料への対応 2.5 化学物質管理のナノ材料への適用 2.6 自主管理はどうあるべきか? 今考えること 2.7 コミュニケーション 2.8 最後に
3章 ナノ材料の曝露評価および健康影響評価への取り組み 3.1 はじめに 3.2 曝露評価の現状と課題 3.2.1 ライフサイクルを考えた曝露評価 3.2.2 曝露評価対象と計測手法 3.3 健康影響評価の現状と課題 3.3.1 体内動態 3.3.2 生体影響評価 3.3.3 曝露手法や曝露状態の計測手法 3.4 リスク評価において留意する点
4章 ナノテクノロジーの作業現場におけるベストプラクティスを提案する 4.1 はじめに 4.1.1 ナノテクノロジーのリスク評価,リスク管理におけるベストプラクティスとは 4.1.2 ナノテクノロジーのプラクティスはどんなものか 4.2 ナノ粒子の取扱いのプラクティスの現状は 4.2.1 産業技術総合研究所の調査 4.2.2 JFEテクノリサーチの調査 4.2.3 ICONによる調査 4.3 ナノ粒子を扱う作業現場での曝露の実態は 4.3.1 曝露はどうやって測るか 4.3.2 ナノテクノロジーの作業現場の環境測定結果はどうか 4.4 ナノ粒子の曝露対策技術にはどんなものがあるか 4.5 ナノ粒子取扱いのベストプラクティスに向けて各国はどんな取り組みをしているか 4.5.1 アメリカでのベストプラクティスの取り組み 4.6 提案されたベストプラクティスとは 4.6.1 調査検討委員会の設置と検討・審議経過 4.6.2 ナノテクノロジーの研究・製造現場における管理手法のガイドライン
5章 ナノテクノロジーの知識の構造化と実用化戦略 5.1 はじめに 5.2 産業基盤技術としてのナノテクノロジー 5.3 材料ナノテクノロジーの実用化 5.3.1 実例からみる材料ナノテクノロジー実用化の課題 5.3.2 技術経営(MOT:Manegement of technology)の視点による材料ナノテクノロジー実用化の課題 5.4 材料ナノテクノロジーの知識基盤構築:「知識の構造化」プラットフォーム 5.4.1 知識の構造化とは何か 5.4.2 ナノテクノロジープログラム(ナノマテリアル・プロセス技術)「材料技術の知識の構造化」プロジェクトとプラットフォームの構築 5.5 「知識の構造化」プラットフォームの実用化 5.5.1 企業ニーズの把握と実用化戦略 5.5.2 実用化のための共同研究候補企業との社内ニーズに関する共同討議 5.5.3 企業内の知識の構造化プラットフォームとその利用方法 5.5.4 教育・研修システムとしての可能性 5.6 まとめと実用化への展望
6章 ナノテクノロジーの工業標準化と実用化戦略 6.1はじめに 6.2 迫る海外からの国際標準化の波 6.2.1 2007年10月−−中国が標準化レースに参戦 6.2.2 「あの」ドイツも提案 6.2.3 韓国の動向 6.2.4 日 本 6.2.5 米 国 6.3 ナノテクノロジー工業標準化の意義 6.3.1 工業標準化とは 6.3.2 グローバルビジネスへの共通言語 6.3.3 標準化の階層 6.3.4 我が国の国際標準化標準化の成功例・失敗例 6.4 危惧の声が国際標準化の引き金 6.4.1 ベネフィットに対して起こった危惧の声 6.4.2 ナノ粒子安全性研究の誤った報道 6.4.3 危惧に対する各国の対応 6.4.4 国際標準化の胎動 6.5 ナノテクノロジー国際標準化の発端から現在まで 6.5.1 端緒は,米国政府と英国政府 6.5.2 ISOにおける標準化動向 6.5.3 ASTM Internationalにおける標準化動向 6.5.4 日本の取り組み 6.6 社会受容に向けた取り組み 6.6.1 「環境影響・作業者健康・安全」に関する国際標準化動向 6.6.2 米国企業のナノテク安全性への取り組み 6.6.3 ISOとOECDの連携について 6.7 我が国産業界の取り組みの一例 6.7.1 ナノテクノロジービジネス推進協議会の活動状況 6.7.2 「考える会」の活動と展開 6.7.3 アメリカの逆提案 6.7.4 「ナノカーボン標準化委員会」 6.8 おわりに
7章 ナノテクノロジーの責任ある統合を目指したナノケベック・モデル−−技術革新の三重らせんモデルから四重らせんモデルへ 7.1 ケベック州 7.2 ケベック技術革新モデルと研究の推進 7.3 ケベック州におけるナノテクノロジーの開発 7.4 ナノケベック−−歴史的概要 7.5 ナノケベックの現在の使命と活動 7.6 ナノケベックが主に目指している方向 7.6.1 方向1 ナノテクノロジーにおける競争力の柱の構築 7.6.2 方向2 ケベックの主要産業部門の強化 7.6.3 方向3 責任ある開発と世界での位置付け 7.7 ナノテクノロジーの責任ある開発 7.8 ナノケベック−−技術革新のひとつの事例?
8章 用語の転換−−ナノテクノロジーから誇大表現を排除するための懐疑的アプローチ 8.1 はじめに 8.2 定義 「ナノテクノロジー」とは何か? 8.3 歴史的な背景 8.4 誇大表現と事実の問題に関する現状 8.5 誇大表現 8.6 事実は? 8.7 主な課題,政府の資金援助と技術開発 8.8 環境,健康,安全に関する懸念 8.9 標準規格と市場 8.10 反証 8.11 結論
9章 大阪大学の「ナノ高度学際教育研究訓練プログラム」 9.1 まえがき 9.2 なぜナノ学際教育が必要か 9.2.1 国内外の状況 9.2.2 企業ニーズ 9.2.3 社会的波及効果 9.2.4 果敢にチャレンジ 9.3 ナノプログラムの特色ある内容 9.3.1 プログラム編成の方針 9.3.2 各プログラムにおける人材育成の考え方 9.4 ナノプログラムの実施状況 9.4.1 大学院博士前期修士課程向けプログラム 9.4.2 大学院後期博士課程向けプログラム 9.4.3 社会人向けプログラム 9.4.4 ナノ関連実習設備の整備 9.5 ナノプログラムの評価 9.5.1 大学院前期修士課程向けプログラム 9.5.2 大学院後期博士課程向けプログラム 9.5.3 社会人向けプログラム 9.6 現状の課題と今後の展開 9.6.1 国内他大学・企業との連携 9.6.2 国際連携 9.6.3 大学院教育の改革 9.6.4 社会への発信 9.7 ナノ人材教育の夢に向けて
10章 ナノテクノロジーの倫理的・法的・社会的影響−−課題と情報発信について 10.1 はじめに 10.2 どのような倫理的,法的,社会的な課題があるのか 10.2.1 どのような課題が考えられるのか 10.2.2 現実的なシナリオが必要 10.3 倫理的,法的,社会的影響とどのように向き合うか 10.3.1 ナノテクノロジーの社会的影響への取り組みの始まり 10.3.2 科学技術振興調整費「ナノテクノロジーの社会受容促進に関する調査研究」 10.3.3 IRGCにおけるナノテクノロジーのリスクへの取り組み 10.3.4 環境・健康影響に関するICONの試み 10.3.5 ナノテクノロジーの標準化 10.3.6 国際的な連携を〜OECDで議論が始まる 10.3.7 UNESCOにおける倫理問題の検討 10.4 ELSIと取り組む各国の動き 10.4.1 米国における取り組み 10.4.2 EUにおける取り組み 10.4.3 英国の取り組み 10.4.5 ANFというアプローチ 10.4.6 ナノテクノロジーの社会受容への取り組み−−台湾の場合 10.5 政策を共に創るということ 10.5.1 情報を伝える方法も変化する 10.5.2 ナノテクディベート−−いくつかの新しい試み 10.5.3 正確な知識の提供を目指して 10.5.4 企業とパブリック・エンゲージメント 10.6 まとめ
11章 安全・安心議論の現状と課題−−リスク・リテラシーの高い社会へ向けて 11.1 はじめに 11.2 安全への不安 11.3 リスク社会の到来? 11.4 過大視されるリスクと過小視されるリスク 11.5 リスク認知 11.6 リスク増幅作用 11.7 BSE対策 11.8 遺伝子組み換えトウモロコ 11.9 低周波電磁界対策 11.10 不安の「イメージ」と「知識」のギャップ 11.11 リスク・リテラシーの問題 11.12 「予防原則」:訳と解釈の混乱 11.13 欧州委員会コミュニケーションと米国のスタンス 11.14 プリコーション的方策の課題 11.15 定量的リスク議論のための新しい構造 11.16 新しいチャンネルの創造 11.17 新たなフレームワークづくり 11.18 メディアへの情報提供のチャネルを増やす 11.19 内部の組織づくり 11.20 まとめ:社会のリスク・リテラシー向上へ
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