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K.H.フォイヤヘアト・中野加都子共著 |
A5・240頁 / 3300円 発行年月日 : 2008年5月 ISBN : 978-4-7655-3430-7 |
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国際経済の発展とともに、環境問題は生産国・消費国ともに対策すべき問題となり、環境問題が国際政治の舞台でとりあげられるようになった。それぞれの国や地域は慣れ親しんだ自然と民俗・文化を持ち、環境への対処方法も大いに異なる。本書は、負荷削減の背景にある現代社会生活(地形・文化・経済等)をつぶさに分析し、ローカルスタンダードな持続可能性のある対策を実行し、グローバルな指標への展開が図れるよう方策を考える。
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プロローグ−なぜメルケル首相は明確に目標を宣言できたのか
第1章 地球温暖化対策をリードするドイツ 1-1 G8主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)でのドイツの目標 1 メルケル首相が明確に目標を宣言できた理由 州の独自性が優先される環境政策/与野党の関係/実績との関係/自信を持った発言ができる根拠/目標が不可能となった場合の対策 2 エネルギー対策−再生可能エネルギー利用の普及・促進 3 住宅対策 省エネルギー住宅を実現するための4つの要素/建物エネルギー証明書 4 ハイリゲンダム・サミット後のドイツの雰囲気 ハイリゲンダム・サミットへの批判/シュミット首相の発言への記者の意見/白熱電球から電球型蛍光ランプへの転換に伴って起こった問題/アフリカ問題 5 ドイツと日本の異なる事情 ドイツの果たす役割/行政と国民の関係/EUの中で刊行が果たす役割/困難なEU内での合意 6 日本で実効可能性を高めるための方策 地域主権の環境政策の重視/ゆるやかな変化への誘導/技術を核としたライフスタイル転換へのインセンティブ/アジアの先進国として日本が果たすべき役割 1-2 ドイツの州制度 1 州制度の概要 州制度の歴史的背景/州制度の特徴/政党の活動/州の権限 2 州制度の抱える問題点 州格差による問題/EU加盟で発生した地域レベルの競争
第2章 グローバルスタンダードとローカルスタンダード 2-1 グローバルスタンダードとしての「サステナビリティ」 1 ヨーロッパ発のサステナビリティ 2 受け手の人間社会による影響の違い 3 ローカルな環境保全活動の積み重ねとしての地域環境 4 超国家機構として「地域」の概念が複雑なヨーロッパ 2-2 日本人から見たローカルスタンダード 1 西欧をモデルとした「単位としての国、地域」 風土に適合した習慣として定着した花見/花見のはじまり/気象と人間都のかかわり/社会的意義 2 地球の風土に適した対策の積み上げによる地球環境保全 里山保全運動/地域の風土に適した環境保全運動 3 まとめ 2-3 母語と風土 1 母語と環境 サクラとCherry blossomsの違い/世界共通の記号的役割を果たす英語/母語による宇宙の見え方 2 日本人と自然との関係 日本人と植物との縁/災厄としての自然/日本人と自然/地域の自然特性を生かすための母語の役割 2-4 地方自治のグローバルスタンダード化の問題点 1 地方自治体の環境行政の変化 産業公害時代−革新者だった地方自治体−/1980年代〜1990年代−停滞期−/1990年代以降−EMS的手法を軸とした環境政策− 2 「地域」の認識の変化 「共同体」から「コミュニティ」への転換/感情共有体的なものへのタブー視 3 単位となりつつある地域 EMS的手法を軸としていることの問題点/西欧の標準化の背景との違い 2-5 ドイツ人から見たローカルスタンダード 1 物理学の社会学への適用 考え方/ラグランジュの原則を適用した社会の状態/社会の各組織での3つの状態 2 相転移による社会状態の説明 階層制度から民主主義への第1種の相転移/異質な粒子の相互関係 3 相転移の社会への応用 金とプラチナ合金の相転移/ドイツ10州での異宗教間の結婚割合/平和と戦争/社会と経済/経済/需要と供給/農業との関係経済システムの4つのモデルの配列 4 まとめ
第3章 アジアの中の先進国「日本」 ―西欧発でない持続可能性の軸を示す必要性― 3-1 ドイツの自然観―ドイツ人として― 1 自然観の背景 2 科学的世界観 3 複雑な自然への考え方 3-2 日本が示す持続可能性の軸の必要性―日本人として― 1 西欧基準化への流れ−基本となってきた「翻訳もの」 2 「まっとうなもの」として受け入れられていない持続可能性 3 アジアの側から差し出すもう一つの普遍的価値尺度 3-3 左脳で考えるドイツ人、右脳で考える日本人 1 言語と自然認識 2 日本の特殊性と国際化の中での位置づけ 日本の特殊性/海外からの受け入れへの冷静なはんだんの重要性/環境改善の目標/まとめ 3-4 日本人の没個性力による自然との共存 1 言語にみる自然主義と没個性 自然主義/没個性 2 日欧の精神構造の違い 神性の概念と自然の概念/日本人の自然を背景とした人種的特徴 3 日本人の没個性的科学技術の導入 西欧からの科学技術の導入/自然界への向かい方 4 まとめ 「個性」のとらえ方/「日本型」の選択 3-5 日本型の自然との調和 1 システム境界内外の考え方 西欧の原理とアジア的原理の違い/日本が依存してきた主要な資源は植物 2 工業製品の生産技術と日本の文化 3 異文化からの学び方 4 まとめ 3-6 翻訳と環境対策直輸入の問題 1 ドイツ人の立場から 断片的な情報の問題点/ドイツではどうですか 2 日本人の立場から 日本の教養主義と輸入文化の功罪/原文至上主義と読者のメリット 3 前向きな情報提供のために
第4章 質量の移動から見た経済学 4-1 質量移動と環境負荷 1 リカルドの「比較生産費説」の問題点 2 経済学によって環境負荷削減対策を考えるうえでの問題点 3 質量の流れから環境負荷を考える必要性 4-2 質量の流れを基本とした考え方 1 人間活動と物質の関与 2 質量移動と貨幣の関係 3 ものの価値と媒体 4-3 質量の流れを基本とした環境負荷の考え方 1 経済システムの基本 2 経済循環の基本 先導国A/従順国B 3 質量を伴わない経済システムによる影響 4 環境負荷との関係 4-4 質量の流れを基本とした「豊かさ」の実現 4-5 まとめ
第5章 これからの方向 5-1 10年前の報告書との比較―ドイツ 1 10年前の報告書の目標 報告書の概要/科学・経済が隠していた問題 2 10年前の報告書の目標はどうなったのか 当時の状況とエネルギー使用に関する目標 3 目標が実現されにくい理由と今後へのヒント 目標が実現されにくい理由/これからの方向性へのヒント 4 10年を経た再出発−枠組みづくり 新たな「送エネルギー計画」/原子力発電に関する政策/エネルギー効率と天然資源効率 5 10年を経た再出発−再生可能エネルギーへの挑戦 エネルギー研究/再生可能資源/再生可能エネルギー 6 まとめ 「動的な法律」が経済界に与えた刺激/3リットル住宅のような国民全体で取り組める海瀬策の具体策/再生可能なエネルギー利用を含めた分散型発電の実現/省エネルギー型ビジネスモデルへの発展 5-2 10年前の報告書との比較−日本 1 10年前の特徴 平成9年版環境白書/科学的知見や技術の重視/経済分野からの報告書 2 10年間の変化 経済界の一般的な変化/環境対策の変化 3 10年を経た再出発 環境白書など/経済分野からの報告書 4 まとめ 5-3 今後の方向 1 法的対応と技術開発 2 環境配慮型のライフスタイルや価値観への転換 3 ローカルスタンダードに基づいた対策を実施できる柔軟な選択肢の準備 エピローグ ― ローカル性を重視したもう一つの軸
第3冊目を終えるにあたって
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